ストレス社会と機能性ディスペプシア

2005年8月4日

 現代は様々な事柄がめまぐるしく変化するストレスの多い社会であるとともに、大変便利で時間的に余裕のある社会でもあります。
 近年ストレスによる胃腸の痛みや、消化管の運動障害による様々な症状を持つ患者さんが増えています。このような患者さんが増えている背景には、世の中が便利になったために患者さん自身が自分の症状を心配する時間的余裕があることも1つの理由と考えられています。すなわちお腹の調子が悪いとそれが気になり、さらにストレスとなり悪循環に陥るわけです。
 胃の痛みやもたれ感、あるいは便通の異常などが続けば内視鏡検査などで詳しく調べる必要があります。しかし、症状があるにもかかわらず検査では特に異常がないこともまれではありません。このような場合、腹痛などの症状が上腹部に存在するものを機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia, FD)と呼んでいます。便通異常が主体であれば前回記したIBSというわけです。IBSと同じようにFDの場合もRomeⅡの診断基準があります。

<FDのRome II 診断基準>

  • 器質的疾患が存在しないにもかかわらず、
  • 腹部正中線上(おなかのまんなか)に ※上腹部の症状が、12か月の中の連続とは限らない
     12週間以上を占める。

※上腹部の症状;胸やけ、食欲不振、腹部膨満感(胃もたれ)、腹痛など。

治療はIBSと同様に食事などの生活指導や腸管の運動を調節する薬剤による治療となりますが、患者さんの状態によっては漢方薬が著効する場合もあります。当院ではFDやIBSに対し、患者さんの状態(証といいます)に応じて積極的に漢方薬を治療にとりいれています。